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車両の運転と花粉症について

今年も花粉の流行シーズンを迎えています。
関東圏では昨年より速いペースで飛散数が増加し、すでに3月上旬と同じ水準に達しているそうです。いつもよりも症状の重い人が増えているという話もあります。
症状はまったくないという人は1割未満で、ほとんどの人が程度の違いはあれど何かしらの症状があるといった状態であると言われる花粉症・・・当然日々車を運転する人にとっても煩わしく多くの人が悩んでいます。運転することが業務に不可欠な事業の場合、事業所としてその対応策に苦慮しているところも多いのではないでしょうか?
 
 
 
花粉症の症状は運転にも支障をきたすことがあります。例えば、涙や鼻水で運転に集中できない・視界が遮られる・くしゃみでハンドルを誤操作してしまう(くしゃみは骨折することもある程大きな衝撃がかかる)などが挙げられます。時速60㎞で走行しているとして、くしゃみで目を瞑って1秒視界が遮られたとすると、その1秒の間に16m進んでいることになります。これは非常に危険な状況です。また症状そのものだけでなく、花粉症の症状を改善する薬を服用することでも鎮静作用があるため眠気や集中力・判断力の低下を引き起こす場合があります。
 
道路交通法66条には「過労・病気・薬物の影響・その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」とあり、これに違反した場合の罰則も同法117条の2第3号と2の2第7号に定められています。
つまり花粉症の症状や服薬による症状が原因で運転に支障が生じるおそれのある時は症状が治まるまで運転を中止しなければいけないということです。そのようなおそれがあることを分かっていて運転した場合、この道路交通法66条に違反することになり得ます。
 
 
「たかが花粉症でしょ?」とあなどってはいけません。
2017年4月に車の運転中花粉症の症状が原因で追突事故を起こし3人が死傷した件において、自動車運転過失致死傷罪の成立を認めた判例が実際あります。『花粉症の症状(くしゃみ・目のかゆみ)がひどくなり、前方注視が困難な状態になると予測できたにもかかわらず、直ちに運転を中止すべき自動車運転上の注意義務を怠り、しかも速度を維持したまま運転を継続した』として運転者の過失があったと検察官が指摘、裁判所も『容易に駐車できる場所もあった。それなのにそのまま運転を続け、結果前方注視が困難になり、自車を対向車線にはみ出させ被害車両に衝突させた。たとえ事前に薬を飲んでいたとしても症状が出てしまったからには速やかに運転を中止しなければいけないことには変わりなく、過失は軽いとはいえない』としてこの事故の刑事責任が認められることになりました。
 
事故を起こした場合には、その当事者であるドライバー個人だけでなく、確たる免責事由がない限り事業者も使用責任や運行供用者責任を負うことになります。そもそも事業者としては各ドライバーの健康状態を把握しておく必要があり、花粉症の症状があることや服薬によって正常な運転ができないおそれがあることなども確認しておかなければなりません。これらを怠り交通事故が生じた場合、事業者の責任の程度が重くなったり、ドライバーの求償(賠償や償還をもとめること)の割合が減らされる可能性があります。また、事業者が「ドライバーが明らかに道路交通法66条に違反するような状態であった」ことを知りながらあえて運転させて交通事故が起こり死傷者がでた場合は事業者自身も同様に刑事罰が課される可能性があるとも言えます。
 
 
このように花粉症は生活の様々な場面において悩ましいだけではなく、特に車両の運転にかかわることにおいて軽視すれば大きな責任を負うことにもつながりかねないものです。
まずはより快適に過ごすためにも「マスクの着用」「衣服や車内の清掃」「換気」などの一般的な花粉症対策を個人でも事業者としても万全にしましょう。さらに事業者は日頃からドライバーの健康状態をしっかりと把握し、それに基づいた交通安全教育を徹底させ、ドライバーは自分の花粉症の程度を確認し、できれば受診して症状の治療・対策を行い、それを事業者に報告しましょう。それでも症状があり運転に危険が生じると予想される時は運転の中断も考え判断するようにしてください。事業者と運転者がお互い協力して対策と注意喚起していくことが花粉症による最悪のケースを未然に防ぐことになります。
 
 
 
花粉症と思われる気になる症状がある時、先ほど自分でその程度を確認したほうがよいと言いましたが、どのようにはかればよいのでしょうか?
花粉症のくしゃみ・鼻水・鼻づまり・眼のかゆみなどの症状の重さやひどさは人によって千差万別の為、適切な治療をうけるためにも自分の症状とその重症度をきちんと把握しておく必要があります。そこで程度の目安として利用したいのが、花粉症を含むアレルギー性鼻炎の治療方針として国がだしている「鼻アレルギー診療ガイドライン~通年性鼻炎と花粉症~(2016年版改定第8版)」です。
 
この指針では「くしゃみ・鼻漏型」「鼻閉型」「充全型(すべての症状が同程度に現れる)」の3タイプに分類し、「一日のくしゃみ発作回数」「鼻をかむ回数」「鼻閉(鼻づまり)」「日常生活の支障度」の各症状・生活への影響の程度によって花粉症を『無症状・軽症・中等症・重症・最重症』の5段階に分けています。
くしゃみ(一日の平均発作回数)と鼻汁(一日の鼻をかんだ回数)はともに1~5回なら【+】、6~10回は【++】、11~20回が【+++】、21回以上が【++++】となります。
また鼻閉(鼻づまり)は、口呼吸は全くないが鼻閉ありが【+】、鼻閉が強く口呼吸が時々ありが【++】、鼻閉が非常に強く口呼吸が一日のうちかなりに時間ありが【+++】、一日中完全に詰まっているが【++++】とされます。
くしゃみ発作回数と鼻をかむ回数のどちらか強いほうをとって、それと鼻閉の二つの程度を比べます。
二つのうちどちらか又はともに【++++】の場合は『最重症』、【+++】は重症、【++】は中等症、【+】は軽症ということになります。どちらかが【++++】の場合はもう一つがたとえ無症状【-】だったとしても『最重症』と見なされます。
これに自分の症状を当てはめて確認すればどの程度の花粉症であるかがわかりやすく受診先でも伝えやすくなりますね。
 
 
毎年激しい症状がみられる患者には「初期療法が有効」だと言われています。初期療法とは、花粉が飛び始めた時季か症状が出始めた時点で薬物による治療を始める治療法で、症状の重症化を抑えることができ、薬を適切に使い分けることで5~6割の患者が花粉症の症状がほとんどない状態でこの時季を過ごすことができるのだそうです。早く対応することで発症時期を遅らせ、シーズンの後半に症状が治まるのを早めるという効果も期待できます。
 
ガイドラインで初期療法として勧めているのは「第二世代抗ヒスタミン薬」「抗LTs薬」「遊離抑制薬」の3つのいずれかの投与です。
「抗ヒスタミン薬」は鼻閉・くしゃみ・鼻水に効果のある薬で、第一世代と言われるものは眠気や口の渇きが副作用としてでやすいというのがありましたが、第二世代は副作用が少なく安全性も高いとして現在最も主流になっています。ただ薬の種類によって効果や副作用に違いがあるため自分にあったものを選ぶことが重要になります。
「抗LTs薬」は鼻閉・くしゃみ・鼻水の他に喘息の改善効果もある薬です。鼻の粘膜や気管支を膨張させるロイコトリエンという伝達物質の分泌を抑えます。
「遊離抑制薬」は点眼薬で鼻閉の解消に効果のある薬です。眠気がでにくく副作用が少ないのが特徴です。
どの薬も症状がでる度に使用するのではなく、2週間ほど継続して使用することで効果を実感しやすくなります。
 
 
 
花粉症対策には上記の初期療法が勧められていることからもわかるとおり、とにかく早めに医師に相談することが大事です。
毎年のことで花粉症なのはわかっているし、市販薬で良くなってる気がするから大丈夫と受診するのを先延ばししている人はいませんか?特に車にプライベートや仕事で日常的に乗る人は思わぬ事故を起こさない為にもできうる限りの対策の一つとしてこれを機に受診してみてはいかがでしょうか?

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